S660に秘められた真の性能を評価

ホンダの「軽スポーツ」として世に送り出した新型車S660。

S660に秘められた真の能力を示し、同時に最速シフトアップタイミングについて考察する。

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S660のスペック

エンジン

直列3気筒ターボ

最高出力:64PS/6000rpm

最大トルク:104Nm/2600rpm

車重:830kg

これよりパワーウェイトレシオは、13.0[kg/PS]とわかります。

トランスミッション

今回の記事で注目する6MTの変速比です。

1速:3.571

2速:2.227

3速:1.529

4速:1.150

5速:0.869

6速:0.686

最終減速比:4.875

参考までに、CVT車の減速比も書いておきます。

CVT減速比:3.152~0.577

最終減速比:5.176

S660基本情報

エンジンはミッドシップレイアウト

特徴的なエンジン性能曲線

5000rpm手前から7700rpmまでほぼフラットに最高出力を発揮し続けるエンジン。

本記事の着眼点

数多く特徴があるS660ですが、この記事ではエンジン性能に注目して性能評価を行います。

具体的には、MTモデルの高回転化されているエンジン性能についてです。

レブリミットは7000rpmから7700rpmにアップされており、非常に広い回転域で最高出力の64馬力を発揮しています。

一部では無駄に高回転化されていると書いている記事もあるようですが、本当でしょうか?

S660の性能面において、加速性能を向上させるための、何か理由が隠れていると思いませんか?

性能曲線をエクセルでプロットする

以前に作成した、フォレスターが280馬力に抑えている理由の時と同様、まずは準備としてエクセルに性能曲線を写していきます。

ホンダが公式発表しているエンジン性能曲線を参考に、代表点を、以下のように定めました。

エンジン回転数 トルク 出力
1000rpm 60Nm
2000rpm 103Nm
4000rpm 102Nm
5000rpm 47kW

そして、作成したエンジン性能曲線がこちらになります。

車速に対する馬力曲線を見る。

S660の加速性能を評価するために、エンジン回転数と車速の関係を導いておきます。

エンジン回転数は1分間の回転数なので、1時間当たりでは60倍回転する

タイヤの回転数は、エンジン回転数÷減速比で求められる

車速はタイヤ回転数×タイヤの外径で求められる

タイヤの外径の単位は一般的にmmなので、kmに換算する

以上の考えより、次の式が導かれます。

$$時速[km/h]=\pi\frac{タイヤ外径[mm]}{1000×1000}×\frac{エンジン回転数}{減速比}×60$$

これによって、エンジン性能曲線の横軸である「エンジン回転数」を「速度」に変換できます。

これによって、車速において、MT車の各ギアにおいて発揮しうる最高出力の関係を得ることができます。

S660の美しき性能曲線

先ほど示した式を用いてエンジン性能曲線の横軸を、「エンジン回転数[rpm]」から「車速[km/h」に換算しました。

ご覧のように、見事にフラットな馬力曲線が描けます。

軽自動車は、最高出力は64PSまでしか発揮できないようにきめられています。

また、クルマはエンジン回転数が変化すれば、馬力も変化するため、多段変速では、常に最高出力を発揮できているわけではありません。

※だからCVT(無段変速機)が存在するわけです。

S660の場合はどうでしょう?

見事に64PSが発揮され続けます。

MT車のレブリミットが、CVT車の7000rpmから7700rpmに引き上げられたことが大きな要因です。

うまくシフトアップすれば、すなわち、レブリミットに当ててから電光石火の変速をすれば、軽自動車における最高出力64PSで加速し続けることができる。

また、CVTとは違い、MTであるので、伝達効率の高さも光る。

S660軽自動車最速の証明

レブリミットの高さと、トランスミッションのギア比が絶妙!

それにより・・・

  • 軽自動車における規制値である最高出力64馬力を発揮し続けることができる。
  • MTはもともと伝達効率が高い

となれば、パワートレインにおいてS660を上回ることは不可能になるわけです。

S660と普通車の比較

S660のパワーウェイトレシオは13.0kg/PSでした。

軽自動車において最も優れたパワートレインを持つS660であれば、同じ軽自動車においてはライバル不在です。

それなら、普通乗用車に視野を広げて、加速性能を比較してみましょう。

例えば、ヴィッツRSと比較してみます。

ヴィッツRSは、トヨタのコンパクトスポーツカーとしてヴィッツRS G’sのベース車両となっている隠れたホットハッチと言えるモデルでしょう。

直列エンジン4気筒1.5L

最高出力:109PS/6000rpm

最大トルク:138Nm/4400rpm

車両重量:1295kg(最軽量モデル)

トランスミッション:5MT

これより、パワーウェイトレシオは、12.6[kg/PS]となります。

S660と比較した場合、単純なパワーウェイトレシオであれば、Vitz RSのほうが上回っています。

しかし、ヴィッツ RSが最高出力を発揮するのは一瞬です。

よって、僅差であれば、常に最高のパワーウェイトレシオで加速できるS660のほうが、加速性能としては上回ります。

このように、S660は軽自動車の枠にはとらわれずに、普通車と比較してもなかなかいい勝負をする車です。

さらに、旋回性においては、軽自動車のコンパクトボディである軽量さと、ミッドシップエンジンによる前後重量配分の最適化によって、普通車ホットハッチ以上の旋回性があります。

総合的に見れば、普通車の1.5Lモデルぐらいとは、十分に比較できるといえます。

普通車の1.5L付近の車といえば、スズキ スイフトスポーツなどもありますから、かなりの走行性能になるといってもいいでしょう。

まとめ

ここまで、S660の加速性能について評価を行ってきました。

一部のサイトでは、無駄に高回転化されているエンジンと書いているサイトもありましたが、S660が軽自動車最速であるために、必須となるエンジン性能曲線でした。

高回転域においても常に64馬力を発揮し続けるエンジンは、軽自動車の規制値内において最大限の出力です。

さらに、MTの段付き変速においても、最高加速を維持するために、幅広い回転域で64馬力を維持する必要があったのです。

また一歩、ホンダのエンジニアの思考回路に近づくことができました。

これが、性能評価の面白い部分だと思います。

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