トヨタが開発した新しいはブリッドシステム、マルチステージハイブリッド。
まさにブラックボックスで、制御方法が不透明ですが、
ここでエネルギ-効率の観点から、その制御方法を考えていきましょう。
ハイブリッドの基本的な考え方は、「エンジンとモーターの効率のいい回転数を使って走る」ことです。
ここにヒントがありました。
目次
一番知りたいのはフル加速時の制御
ブリュの公式ブログでは、クルマの性能評価カテゴリにおいて、クルマの加速性能の可視化を行っています。
そこで知りたいのが、トヨタのマルチステージハイブリッドの動作。
これがわかると、いろいろと当ブログにも発展性が生まれてきそうです。
トヨタの公式サイトでは、以下のような図が用いられていました。
図のように、エンジンは、動力分割機構によって、出力軸と発電機に動力が分割され、効率のいい状態で加速する。
でもこれ、正直よくわからないと思いませんか?
エンジンは、直接タイヤを転がすのではなく、いったん発電機で発電してモーターを介してタイヤを転がすのか。
これを、「効率」をキーワードに見てみます。
エンジンはトルクバンドで最も効率がいい
エンジンの効率がいいのはトルクバンドです。
最大トルクに近いトルクが発揮される回転域のことですね。
トルクは軸を回転させる力、すなわち回転力そのものですから、回転力が効率よく取り出せるのがトルクバンドです。
逆に、一番力が出るのが最高出力発生回転数です。
イメージ的には、トルクバンドは10の燃料で7の力が取り出せるとします。
この場合、効率は70%ですね。
逆に最高出力ってのは、12の燃料で8の力が取り出せるイメージです。
この場合の効率は66%程度になります。
効率ではトルクバンドが優れますが、エネルギー的には、最高出力発生回転数のほうが大きい。
こんなイメージでOKだと思います。
では、フル加速時のハイブリッドシステムの制御方法を解明していきます。
ハイブリッドシステムの制御:発進時の制御
エンジン単体のクルマのデメリットは、AT車の場合にはタイヤの回転数とエンジン回転数が、トランスミッションを経由して機械的につながっていることです。
つまり、車速とギア比が決まれば、エンジン回転数はただ一つに決まってしまうのです。
例えば、20km/hで3000rpmで決まっていた場合、車速に関係なくエンジンを5000rpmにすることは不可能です。
AT車の場合には、エンジン回転数が車速と関係性がある以上、エンジン回転数を上昇させながら加速していく必要があります。
この時に、エンジンはアイドリングから立ち上がっていくことから、トルクバンドを大きく外してしまい、効率も悪くパワーも出ないため、いい状態とは言えません。
ハイブリッド車の場合にはどうでしょうか?
エンジン回転数と車速の1対1の関係を分断するには、発電機を回して、モーターでタイヤを回すと大丈夫だと思いませんか?
発進時にエンジンを速やかに上昇させ、トルクバンドにいれます。
エンジンを発電機と接続し、発電します。
発電機は、エンジンから入った機械的なエネルギーを、電気エネルギーに変換します。
モーターは、発電機からの電気エネルギ-を受けて、タイヤを回します。
このようにすることで、エンジンと車速の関係を切り離しつつ、エンジンの発生したエネルギーを、モーターを介してタイヤに伝えることができますね。
ハイブリッドシステムの制御:ある程度車速が上昇した後
ある程度車速が上昇して、エンジンとタイヤを機械的に接続したとしても、エンジンがトルクバンドに入るようになると、発電機と切り離して直接タイヤを転がします。
エネルギー変換は、できるだけ変換回数が少ないほうが効率がいいです。
例えば、変換効率が90%のシステムで2下位変換を行うと、全体の効率では0.9×0.9=0.81となり、81%となります。
したがって、エンジンで直接タイヤを転がしてもトルクバンドに入る車速になれば、エンジンは直接駆動力をタイヤに伝えます。
ハイブリッドシステムの制御:フル加速へ
そのまま加速を続けて、システム最高出力に到達すると、その状態を維持したまま加速が行われます。
加速力は馬力で決まる。
このことについては、以前にまとめたのでそちらをご覧ください。
ハイブリッドシステムのフル加速時の制御をまとめる
ここで、ハイブリッドシステムのフル加速時の制御についてまとめます。
1.発進時にはエンジンは発電に徹する
エンジンは車速との関係を切り離して回転させることで、瞬時にトルクバンドに入ります。
そこで、発電に徹し、発電された電気を使ってモーターが駆動力を生み出します。
2.車速が上がると、エンジンは直接タイヤを転がす。
エネルギー変換は、回数が少ないほど全体効率が高くなります。
エンジンとタイヤをつないでも、トルクバンドに入る車速になれば、エンジンは直接タイヤを転がします。
3.そのままシステム最高出力へ
システム最高出力に到達すると、あとはその状態を維持してフル加速が行われます。
あらためて、トヨタのハイブリッドシステムの紹介画像を見てみましょう。
今までの話の流れを読むと、効率のいい具合に制御してるってトヨタの説明も、ちょっとわかった感じがしませんか?
加速動画で確かめてみる
最後に、加速動画で確かめてみましょう。
この動画は、マルチステージハイブリッドを搭載しているレクサスLC500hの加速動画です。
初めにエンジン回転数を3000rpm上げていますが、この時はクラッチで機械的に切り離されているはずです。
そして動き出した瞬間、エンジンは回転数がぶれずにそのまま回転数が上昇していきます。
通常、クラッチがつながった瞬間にはエンジン回転数がぶれるのですが、ぶれないといううのは機械的につながっていないからです。
その後、どのタイミングかはわかりませんが、エンジンはタイヤと直結して加速を行っています。
試しに、同じレクサスのGS Fのフル加速動画を見ています。
おそらく運転操作自体は同じで、アクセルとブレーキを同時に踏み、ブレーキを離してフル加速しています。
ですが、動き出す瞬間に、エンジン回転数がぶれていたり、もたついているのがわかると思います。
やはり、トヨタ、レクサスのハイブリッド車では、動き出す瞬間にはエンジンとタイヤは機械的にはつながっていないと考えることができます。
ハイブリッドシステムのフル加速時の制御をまとめる
最後に、まとめとしてもう一度ハイブリッドシステムの動作をまとめます。
1.発進時にはエンジンは発電に徹する
2.車速が上がると、エンジンは直接タイヤを転がす。
3.そのままシステム最高出力へ
今後は、この考え方をベースに、加速性能の比較ができそうです。