新型レガシィの2020年モデルが世界公開されました。
搭載されるエンジンは、2.4Lターボと2.5L自然吸気エンジン。
レガシィのターボモデルの復活ですが、日本導入の際には課題があります。
リニアトロニックの許容トルクとの関係から考えていきます。
目次
新型レガシィ2020年モデルの詳細
新型レガシィは、通算で7台目となるモデルです。
5代目レガシィまでは、ハイパフォーマンスモデルとしてターボ車が設定されていました。
しかし、スポーツ走行分野において、レヴォーグやWRX S4に引き継がれ、6代目レガシィは大幅に高級車路線に変更しました。
その結果、ターボ車ではなく、大排気量自然吸気エンジンを搭載することとなり、一気にコンセプトの変更がありました。
そんな中登場した7代目レガシィでは、ターボモデルが復活。
海外専売モデルのアセントに搭載されている、2.4L直噴ターボエンジンが搭載されることになりました。
では、スペックを見ていきましょう。
2.4L直噴ターボエンジン
水平対向4気筒 2.4L 直噴ターボ
最高出力:260HP/5600rpm
最大トルク:277lb-ft/2000-4800rpm
2.5L自然吸気エンジン
水平対向4気筒 2.5L
最高出力:182HP
最大トルク:176lb-ft
アメリカでは、エンジンスペックが控えめに設定されています。
アメリカでは性能が控えめになる
日本車全メーカーにおいて、アメリカにおいては、日本仕様よりもエンジンスペックが控えめに設定されています。
あるいは、性能が同じなら排気量が大きめに設定されています。
この理由としては道路事情の違いがあります。
日本においては、高速道路と言っても100km/hまで。
あとは街中のストップアンドゴーがほとんどです。
つまり、エンジンの最高出力を発揮し続ける場面はまずありません。
逆に、アメリカの場合はどうでしょうか。
何もない一直線の道を、思いっきり加速し続ける場面があります。
この時、エンジンは最高出力を発揮し続けることとなり、大きな負荷がかかります。
そんな負荷があったとしても、エンジンが壊れないように出力を控えたり、排気量を大きくして余裕を見た設計にされています。
2.4Lターボエンジンとリニアトロニック
したがって、アメリカ仕様の2.4L直噴ターボエンジンは、最高出力が260HP程度に抑えられていますが、日本に導入される場合には2.0L直噴ターボモデルのエンジンスペックを超えてきます。
5台目レガシィDITのエンジンスペックを見ていきましょう。
水平対向4気筒 2.0L 直噴ターボ
最高出力:221kW(300PS)/5600rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgf・m)/2000-4800rpm
排気量が拡大されれば、単純にこの性能を超えます。
すると、300馬力、400Nmは余裕で超えます。
魅力的なエンジン性能になりますが、果たしてこんなハイスペックエンジンを簡単に搭載できるでしょうか?
リニアトロニックの許容トルクは、現状で400Nmとなっています。
つまり、2.0L直噴ターボエンジンが、リニアトロニックにとっては限界となります。
この状況で、2.4Lターボエンジンをそのまま搭載することは不可能です。
日本仕様のレガシィターボのスペック
これらを踏まえて、2020年モデルのレガシィのターボモデルが、日本に導入された場合のスペックについて予想してみます。
考えられる方法は、次の4つになります。
1.リニアトロニックの許容トルクがアップ
2.排気量が2.0Lターボにダウンサイジングされる
3.排気量は2.4Lターボのままで出力を抑える
4.高出力エンジンのままギア比でトルクを抑える
それぞれについて詳細を見ていきます。
1.リニアトロニックの許容トルクがアップ
この方法が一番最適です。
リニアトロニックの許容トルクさえ大きくなれば、エンジン性能の問題は消えます。
ただし、技術面でどこまで許容できるかについては不明な部分があり、レヴォーグやWRX S4に搭載されている許容トルク400Nmのスポーツリニアトロニックが流用される可能性が高いため、簡単には決めきれない選択肢です。
2.排気量が2.0Lターボにダウンサイジングされる
排気量のダウンサイジングは濃厚な手段だと思います。
400Nmを発揮する2.0L直噴ターボエンジンがあれば、2.4Lターボは不要になります。
したがって、排気量を大きくする必要がないため、2.4Lではなく2.0Lターボが搭載される可能性があります。
3.排気量は2.4Lターボのまま出力を抑える
排気量を2.4Lターボにしたまま、最大トルクを400Nmに抑える方法があります。
アメリカ用のスペックを見ていると、最大出力発生回転数は5600rpmであり、まだ高回転化はできないようです。
そのため、2.4Lターボに排気量を拡大しつつ、従来の300馬力/400Nmの2.0Lターボエンジンと同じ出力にする可能性があります。
この場合、紙面スペック上での優位性は見えませんが、フィーリングにおいては大きな差が出ます。
ここで書くと長くなるので、後述します。
4.高出力エンジンのままギア比でトルクを抑える
これは、フォレスターが280馬力に出力を抑えていることに関して書いたことの逆バージョンです。
フォレスターの場合、最大トルクが350Nmですが、リニアトロニックの前に1.129の減速があり、リニアトロニックに入力されるトルクは395.15Nmとなり、リニアトロニックの許容トルク400Nmいっぱいのものを入力されるものでした。
レガシィの場合には、逆に加速する方法もあるでしょう。
例えば、エンジン最大トルクが420Nmだったとします。
この時に、リニアトロニックの入力前に、0.952のギアを入れたとします。
すると、リニアトロニックに入力される最大トルクは、420×0.952=399.84Nmとなり、リニアトロニックの問題は解決できます。
重たくしたギアについては、リニアトロニックの変速や、最終減速比によって打ち消せば、エンジン性能を100%発揮した走りができます。
この中で、一番簡単な方法が2と3でしょう。
従来型のエンジンを搭載する、あるいはチューニングを変えるだけなので、機械的に何かが変わるわけではないので実現しやすいはずです。
1についてはスバルの状況がわからないので、何とも言えません。
4については、エンジン配置のスペース上の問題が起こる可能性があります。
排気量の拡大はターボラグの解消に効果がある
前節の3で書いている、2.4Lターボエンジンを搭載し、従来型2.0Lターボと同じスペックにすることについては、ターボラグの解消に効果があります。
ご存知の通り、ターボ車にはターボラグがつきものです。
例えば、5代目レガシィDITの場合、2.0L直噴ターボですが、最高出力は300馬力になり、3.5L級の加速性能を発揮します。
しかし、アイドリング状態ではあくまでも2.0Lエンジンです。
加速し、エンジン回転数が上がるにしたがって、ターボが効きます。
ターボが効き始め、効果が増す段階では、非線形な立ち上がりの加速が体感できます。
この、エンジン性能が2.0Lから3.5L相当へと変化していく過程が、ターボラグになります。
つまり、2.0Lと3.5Lで、性能に段差があるということです。
その点、2.4Lに排気量を拡大し、ターボの性能を控えめに設定し、エンジン性能を従来の2.0Lターボと同じ、3.5Lクラスに据え置きしたとします。
これにより、ターボラグの過程において、2.0L→3.5Lと変化するよりも、2.4L→3.5Lとするほうが、加速時の段差が少なくなります。
これにより、紙面上には表れない、実際の低速トルクが太くなり、乗り味がマイルドで、あたかも大排気量エンジンに乗っているような感覚になります。
(これがドイツ車に多いダウンサイジングターボエンジンの考え方です。)
今回の2020年モデルのレガシィの場合には、水平対向6気筒3.6LエンジンのEZ36型エンジンの置き換えともいわれています。
5代目レガシィの時のような、2.0Lのハイパワーターボではなく、3.6Lの置き換えの2.4Lダウンサイジングターボととらえるなら、エンジン性能据え置きは有効な手段です。
この方法は、走りを求める場合にはあまり好まれる手段ではないですが、こういったダウンサイジングという考えによって設計されているクルマもあるという視点で見ると、おもしろい発見があったりします。
まとめ
ここまで、新型レガシィ2020年モデルのエンジン性能とリニアトロニックについて考えてきました。
日本導入の際には、やはりリニアトロニックの許容トルクが問題となります。
したがって、7代目レガシィでターボが搭載される場合には、2.0Lターボエンジンになるか、性能が控えめな2.4Lターボエンジンになるでしょう。
仮に出力が同じであるなら、2.0Lターボエンジンの場合には、ハイパワーターボ、2.4Lターボの場合にはダウンサイジングターボの側面が強いといえます。
ターボ搭載にはいろいろ問題がありますが、日本ではターボは設定しません!とならないことを願っています。