車の加速性能は馬力とトルク、どちらで決まるのか?
高馬力の車の加速が遅かったり、
トルクの太いクルマの最高速が遅かったり・・・
結局どっち?って方のために、数式を用いて簡潔に説明します!
目次
車の加速性能は馬力派、トルク派、それぞれの意見
馬力派の意見
馬力はエネルギー。だから、発生エネルギーの大きいほうが加速がいい!
馬力のあるクルマはスポ-ツモデルで多いです。
トルク派の意見
力×中心からの距離がトルク。
だからトルクが大きいと加速力が良い。
トルクの太いクルマはディーゼル車とかが代表格ですね。
両方正しそうですよね。
では、トルク派の意見をもとに、車の加速性能を数式で表してみましょう。
なお、ここでは馬力とトルクに注目するため、車重については考慮しません。
加速力を計算
タイヤに伝わる力$F$は、タイヤの軸のトルク$T_t$、タイヤ半径$R$として、次の式で表すことができます。
$
F=\frac{T_t}{R}
$
よって、タイヤに伝わるトルクが大きいほうが加速がいい。
でも、あくまでタイヤに伝わるトルクです。
タイヤに伝わるトルク
では、タイヤに伝わるトルクはどうなるでしょうか?
タイヤに伝わるトルク$T_t$は、エンジン発生トルク$T_e$、ギア比$A$として、次の式で表されます。
$
T_t=A×T_t
$
ここで、ギア比$A$は、エンジン回転数$R_e$、タイヤの軸の回転数(=タイヤ回転数)$R_t$を用いて、次の式で表されます。
$
A=\frac{R_e}{R_t}
$
したがって、タイヤに伝わるトルクは、次の式になります。
$
T_t=\frac{R_e}{R_t}×T_t
$
ここで気づいた方は鋭い!
馬力って、エンジン回転数とトルクの積で表すことができます。、
つまり、馬力$P$、エンジン発生トルク$T_e$、エンジン回転数$R_e$とすれば、適当な定数$C$として、
$
P=C×T_e×R_e
$
となります。
結果、タイヤへの伝達トルクは、馬力$P$を用いて、次の式で表すことができます。
$
T_t=\frac{R_e}{R_t}×T_t=\frac{P}{C×R_t}
$
よって、駆動力は、
$
F=\frac{P}{C×R_t×R}
$
日本語で書けば、
$
駆動力=\frac{馬力}{定数×タイヤ回転数×タイヤ半径}
$
となります。
走行中、タイヤ半径は一定、タイヤ回転数は加速とともに変化するものであり、車体が同じなら条件は同じ。
よって、同じ車体に高馬力のエンジンと、高トルクのエンジンを搭載した場合、高馬力のエンジンの方が加速が良い、
つまり加速性能は馬力で決まることがわかりました。
ここで、トルクが太いのに加速が悪いクルマの疑問は解けました。
でも、最高出力が大きいのに、加速が悪いクルマの疑問はまだ残ります。
そこで、低速トルクの話に移ります。
低速トルクって何だろう
低速トルクは、低速「トルク」だからややこしい話です。
先の段落で、車の加速性能は加速性能は馬力で決まることがわかりました。
低速トルクも同じです。
馬力はエンジン回転数とエンジン発生トルクの積で決まります。
なら、低速トルクが太いとどうなるか?
回転数が同じなら、馬力が大きくなりますね。
だから、低速トルクの太いクルマは、低回転時の馬力が大きいから加速がいい。
これが答えです。
まとめ
車の加速性能は、馬力によって決定することがわかりました。
よって、低速トルクは、低回転時の馬力が大きくなるから、エンジン立ち上がり段階での加速性能が良いこともわかりました。
したがって・・・
最高出力の大きいクルマ
最高出力が大きいから、エンジンを回し切った時の加速はいい。
したがって、最高速も速くなる。
しかし、低速トルクが細い場合には、スタートダッシュは遅い。
低速トルクの太いクルマ
低速トルクが太い→低回転馬力が大きいか、スタートダッシュがいい。
逆に、馬力が小さい場合、高速域になると最高出力の頭打ちで加速が鈍る。
実際にはターボラグの影響、
ギア比の影響、
ATかMTか、
などで、さらに話はややこしくなりますが、
エンジン特性の基本的な部分ではこのような感じです。
ディーゼルエンジンは加速が良いと感じますが、踏み続けてると頭打ちがありますし、
高回転馬力のある車では、出足が遅かったりします。