世界最速のハイブリッド日産スカイライン350GT HYBRIDの加速性能を可視化してみた。

世界最速のハイブリッドとして登場した日産スカイライン350GT HYBRID。

速い速いといわれていて、動画を見ると「はぇ~」ってなりますが、その加速性能の可視化までを考えてみました。

ハイブリッド車のシステムは普通のエンジン車と比べても複雑であり、なかなかグラフで表すのは難しいです。

今回は、若干の推測的部分も交えながら、普通のエンジン車のように可視化することに挑戦しました。

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そもそも、ハイブリッド車の加速性能の可視化はなぜ難しいか?

ハイブリッド車の加速性能の可視化ってかなり難しいです。

1.応答速度が全く違う。

第一に、エンジンとモーターでは、応答特性が違います。

エンジン同士であれば、300馬力のエンジンと200馬力のエンジン、どっちが速い?ってなれば、相対的にみれば当然300馬力のエンジンでしょう。

仮に外気温などの条件でエンジン性能が低下していて、性能が2割減になっていても、相対的な加速性能は入れ替わりません。

しかし、モーターの場合には、電流を流した瞬間に動き出します。

もう、応答速度が速すぎるんですね。

仮にエンジンとモーターで全く同じ性能曲線が描けたとしても、エンジンよりもモーターのほうが、圧倒的にレスポンスが上です。

一番わかりやすい例が、ホンダのNSX、レジェンドでしょう。

リアの2輪をモーターで制御しますが、応答の速さから、通常のエンジン車のAWDシステムよりも安定しているはずです。

2.エンジン回転数とモーター回転数の関係性が不明

次に、エンジン回転数とモーター回転数の関係性が全く分かりません。

特に、トヨタはかなり複雑なハイブリッドシステムを採用しています。

レクサス LS500hでは、マルチステージハイブリッドが採用されていますね。

あのハイブリッドシステムは、メイントランスミッションの電気式無段変速機とは別に、4速ATが入っています。

これを考えようと思うと、かなり難しいと思います。

そんな中でも、日産は、比較的シンプルなハイブリッドシステムを採用しているので、スカイラインなら加速性能のイメージを可視化できるのではと、計算してみました。

スカイラインハイブリッドのハイブリッドシステムは、次のようなものになっています。

エンジンとモーターが同軸上にある構造なので、エンジン回転数=モーター回転数となるために、他のハイブリッドシステムよりもグラフ化しやすいでしょう。

前置きが長くなりましたが、ここから本題に入ります。

スカイラインハイブリッドのスペック

スカイライン350GT HYBRIDのスペックは次のようになっています。

エンジン

V型エンジン6気筒3.5L
最高出力:225kW(306PS)/6800rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgf・m)/5000rpm

モーター

最高出力:50kW(68PS)
最大トルク:290Nm(29.6kgf・m)

システム最高出力

268kW(364PS)

トランスミッション

7速AT

減速比

1速:4.783
2速:3.102
3速:1.984
4速:1.371
5速:1.000
6速:0.870
7速:0.775
最終:2.611

ここで、システム最高出力が、エンジン最高出力発生回転数で発生すると仮定すれば、
エンジンとモーターが、クラッチを介してギア比1で直結状態であるので、エンジンの最高出力発生回転数において、モーター出力はシステム最高出力との差となることがわかります。

したがって、モータースペックとして、
(システム最高出力268kW)-(エンジン最高出力225kW)
より、
43kW/6800rpm
ということがわかりますね。

まずはエンジン性能曲線から

まずは、わかりやすいエンジン性能曲線から描いていくことにします。

上にあるエンジン性能曲線から次の代表点を選びました。

1000rpm 270Nm
4000rpm 130kW
5000rpm 350Nm(最大トルク)
6000rpm 210kW
6800rpm 225kW(最高出力)
7200rpm 220kW

これらの代表点から、トルク曲線を描き、出力曲線を描きます。

なお、代表点の間のトルクは線形で近似しています。

モーター性能曲線を描く。
~日産リーフの性能を参考に~

次に、モーター性能曲線の参考として、日産リーフの性能を見ていきます。

日産リーフの性能は次のようになっています。

最高出力:110kW(150PS)/3283-9795rpm
最大トルク:320Nm(32.6kgf・m)/0-3283rpm

ここからわかることは、最大トルクが0-3283rpmで発揮されて、その後3283rpmから最高出力が発揮されています。

したがって、スカイラインハイブリッドのモーターも同じと考えると、最高出力の50PSの発生回転数は、最大トルクである290Nmの切れ目にあると考えるのが妥当です。

モーター出力の減少するタイミング

最高出力の50kWに到達してから、モーター出力が減少を始めるタイミングを考える必要があります。

これは、システム最高出力を基準にすれば分かりやすいですね。

エンジン出力と、モーター出力の和を計算することで、システム最高出力に到達した時点で、そのシステム最高出力を維持するようにモーター出力を減少させます。

最後に、エンジンが、最高出力発生回転数の6800rpmに到達したとき、モーター出力はそのまま線形に減少すると考えましょう。
この最後に部分は予測手段がないので、仮定の部分にいなります。

モーター性能曲線の描き方

ここまでの流れで、モーターの性能曲線の書き方をまとめてみます。

0rpmから、最大トルクの290Nmを発揮する。

同時に出力も計算していき、50kWになったところで、最高出力を一定にする。

エンジン出力との和を計算し、システム最高出力の268kWになった段階で、システム最高出力で一定維持するようにモーターの出力を変化させる。

エンジン最高出力発生回転数の6800rpmになった時点で、モーター出力を線形に減少させる。

これをもとに、モーター性能曲線を描いていきます。

手順1:モーター最高出力発生回転数の特定

順番にモーターの性能曲線を描いていきます。

まずは、最高出力発生回転数を特定します。

エンジン性能曲線を模擬して表す関係上、1000rpmから290Nmを発揮しているとし、出力を計算。

50kWに到達した時点から出力一定とします。

なお、エンジン回転数は10rpm刻みで計算しています。

すると、1650rpmの時点で、出力が50.1084kWになりました。

したがって、最高出力発生回転数は、1650rpm以降になります。

同時に、最大トルクに関しては、290Nm/0-1650rpmともわかります。

手順2:モーター出力の減少回転数を特定

次に、エンジン出力と、モーター最高出力50kWの和を計算し、システム最高出力の268kWになる回転数を特定します。

計算の結果、6410rpmの時点で268kWになりました。

ここからは、モーター出力は、システム最高出力である268kW一定になるような出力で変化していきます。

同時に、モーター最高出力に関して、50kW/1650-6410rpmともわかりますね。

手順3:エンジン最高出力発生回転数以降

エンジン最高出力発生回転数以降は、線形に出力を減少させます。

具体的には、6800rpmでエンジンが最高出力を発揮するので、直前の6790rpmと6800rpmでのモーター出力変化の傾き一定で、7200rpmまで減少させます。

スカイライン350GTハイブリッドの性能曲線

最後に、スカイライン350GTハイブリッドの性能曲線を描きます。

これは、エンジン性能曲線と、モーター性能曲線の単純な和で表すことができるので、計算すると次のグラフになりました。

スカイラインハイブリッドが速い理由は、モーターアシストによって、システム出力回転数が1000rpm程度において、500Nmを超えています。

これは、5.0L車の最大トルクに匹敵する数値であり、発進した瞬間から強烈なトルクを発生させることで、瞬発力を高めています。

まとめ

今回は、日産スカイライン350GTハイブリッドを例に、ハイブリッド車の加速性能を、エンジン性能曲線を模擬する形で可視化しました。

あとは今まで通りに、車速との関係性を計算することで、普通のエンジン車との加速性能の比較がやりやすくなったのではと思います。

メルセデスAMG A45と比較しても面白そうですね。

参考

新登場したV6ターボの400Rとハイブリッドの加速性能評価を行いました。

日常用途も含め、バランスの取れたのがハイブリッド、フル加速時の性能に尖っているのが400Rといった位置づけになります。

スカイライン V6 ターボモデルの400RとGT V6 TURBOの加速性能評価

あわせてご覧ください。

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