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今回は、新型のランドクルーザーについて、ガソリン車とディーゼル車のオフロードの比較を行います。
以前にオンロード版ではガソリン車の方が走行性能に優れることを説明しましたが、今回はオフロード版です。
オフロードでは、ディーゼル車が優位です。
ポイントとなるのは、
- トルクコンバーターのトルク増幅特性
- エンジンから発生する最大トルク
の関係です。
発進する瞬間、車が動き出す瞬間には、エンジンの最大トルク点で加速するのがよく、その時の最大トルクが車の発進性能に直結します。
では、走行条件も考えながら、説明をしていきます。
目次
オフロードの発進性能の特殊な状況を考える
オフロードで想定される走行シーンは以下の通りです。
・障害物を乗り越えるとき
・穴にハマったとき(スタックなど)
・急な斜面を登るとき
ちょうどトヨタの公式動画に、その状況の走行シーンがありました。
ロックセッションでのトルクの重要性がわかるシーンがこちらです。
こうした状況では、発進性能、つまりトルクが重要です。
さらに、トルクコンバーターを経由してタイヤにトルクが伝達されるため、トルクコンバーターによるトルクの増幅もキーになります。
一方で、最高出力は関係ありません。
最高出力は、走行速度が速く、トランスミッションの最適なギアの選択が可能な場合における加速性能の比較です。
オフロードの発進性能の場合、ギアは1速で固定状態ですから、エンジンのトルクがダイレクトに効きます。
今回の記事では、車が動き出す瞬間の状態を取り上げています。
イメージしてみると、発進の瞬間はタイヤの回転は停止しています。
エンジンが最高出力を発揮する5000rpmなどは、あまりに回転数が不整合になります。
さらに次で紹介するトルクコンバーターのトルク増幅では、入力側と出力側の滑り方でトルク増幅が決まります。
増幅するのはトルク、つまり、出力がどれだけ高くても、トルクが小さければ意味がありません。
発進の瞬間タイヤは停止しているので、エンジンが伝えるエネルギーは0。
発進の瞬間は、どれだけエンジンがエネルギーを供給しても、タイヤに伝わらないので、出力を比較する意味がありません。
比較するべきは、エンジンの発生トルクになり、それが何倍されてタイヤに伝わるか、ということです。
トルクコンバーターの滑りとトルクの増幅
トルクコンバーターは流体クラッチであり、エンジン側(入力側)とタイヤ側(出力側)に回転数差があるときにトルクを増幅します。
下の画像はgooよりの引用ですが、ざっくりとイメージがつかめるでしょう。
赤線に注目すれば、速度比が最も小さいとき、エンジンのトルクを2倍程度に増幅します。
そして、車速が上昇し始めると、トルクの増幅は小さくなります。
※AT車のクリープ現象も、このトルクコンバーターによる車両静止時のトルク増幅によるものです。
つまり、トルクコンバーターの最大伝達トルクとは、
- エンジンが最大トルクを発生
- タイヤが静止状態
の時に生じます。
これが、タイヤ静止時の条件から、ちょうど発進時に相当するんですね。
参考にですが、エンジン回転数は関係ないです。
$$速度比=\frac{出力側回転数}{入力側回転数}$$
であり、出力側回転数が0の状態ですから、エンジン回転数が何rpmであっても、速度比は0です。
つまり、単純にエンジン発生トルクの2倍がタイヤに伝達されるので、エンジンは最大トルク発生回転数で発進させるのがベストです。
最大トルク50Nmの差が、1tを引張り上げる力の差になる。
では、ガソリン車とディーゼル車の、発進時にタイヤに伝わる最大トルクを比較してみましょう。
- 1速:4.923
- 2速:3.257
- 3速:2.349
- 4速:1.944
- 5速:1.532
- 6速:1.193
- 7速:1.000
- 8速:0.801
- 9速:0.661
- 10速:0.613
- 最終減速比:3.307
- 副変速機:Hi 1.000, Lo 2.618
より、1速, 副変速機Loの時を想定すれば、トルクコンバーターのトルク倍率を2倍として、タイヤへの伝達トルクは、
- ガソリン車:650×4.923×3.307×2.618×2=55,409Nm
- ディーゼル車:700×4.923×3.307×2.618×2=59,671Nm
となり、その差は4262Nmです。
純正タイヤ265/60R18のタイヤ外形が801mmなので、路面に伝わる発進時の駆動力の差は、10,642Nの差です。
10,642Nは、重さに換算すると1086kgの物体の重力に相当します。
若干極端なイメージですが、物理の問題のイメージで考えると、ディーゼル車は1086kgの物体を吊り下げた状態でもガソリン車と同等の発進性能があることになります。
これが、ディーゼル車のオフロードの走破性になります。
最高速度は求めず、あらゆる場面で確実に発進できるのが、ディーゼル車の位置づけです。
まとめ
ここまで、ランドクルーザーのオフロード性能について、ディーゼル車とガソリン車の比較を行い、発進性能に優れるディーゼル車の優位性を紹介してきました。
オンロード走行ではあまり差にならないディーゼル車の+50Nmの低速トルクも、オフロードになると走破性として明らかな差が出てきます。
そのため、悪路走行を行う方はディーゼル車が最適になります。
ただし、オンロードにおける走りの余裕で見れば、ガソリン車の方が全体的に性能がいいという点も知っておいてください。
なお、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに対して、等価的にローギア設定と考えると理解しやすいです。
発進性能を向上させる一番わかりやすい方法は、トランスミッションのギア比を大きくすることです。
しかし、トランスミッションのギア比といっても、ある程度で限界はあります。
その他、エンジン側で発進性能を高くするには、低速トルク重視のエンジンを設計し、エンジンそのものをの等価的なローギア設定にすることも考えられます。
エンジン単体でローギア設定にするには、
- ロングストローク化
- ディーゼル化
が考えられますが、デメリットとして、高回転の馬力が落ち、エンジンのポテンシャル(タイヤに伝え得る最大トルク)が低下することになります。
結局エンジン自体はトルクを太くしてオフロードに向けるのか、高回転馬力を重視してオンロードに向けるのかで、トレードオフの関係になっています。
以上、ランドクルーザー ディーゼル車のオフロード性能について、参考になれば幸いです。