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今回は、メルセデス・ベンツのハイパフォーマンスモデルにおける、メルセデスAMG A45SとメルセデスAMG A35のローンチコントロール作動時の加速性能の比較を行います。
ローンチコントロール作動時を条件としていますので、アクセルとブレーキを同時に踏み込み、ブレーキを離して一気に加速していく場合を想定しています。
サーキットなどで加速タイムを比較する場合など、非日常化における有効な比較検証となります。
日常用途を重視した比較は、日常用途におけるA45SとA35の比較をご覧ください。
この記事においてはAクラスを対象としていますが、エンジン性能が同じ条件となるCLA45SとCLA35および、今後登場するであろうGLA45SとGLA35の加速性能比較と同じですので、適宜読み替えてごらんください。
目次
メルセデスAMG A45SとA35のスペック
まずは、比較対象となるメルセデスAMG A45SとA35のスペックを紹介します。
メルセデスAMG A45S
直列エンジン4気筒 2.0L ターボ
最高出力:310kW(421PS)/6750rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgf・m)/5000-5250rpm
エンジン性能曲線は、以下のグラフになります。
トランスミッション:8速DCT
この8速DCTについては、メルセデス・ベンツは、A45Sのギア比の情報を一切公開しておりません。
よって、公式データから情報を得るのは不可能です。
海外サイトも含めて調べた結果、トランスミッション各変速段における、レブリミット(7200rpm)における最高速は、
1速:56km/h
2速:80km/h
3速:122km/h
4速:174km/h
5速:239km/h
6速:305km/h
7速:390km/h
8速:494km/h
出展:automobile-catalog.com
※日本国内から上記ページへアクセスできないようなのでGoogle翻訳の原文ページへリンクさせています。
という情報を得られました。
これより、エンジン回転数と車速の比率として、上記数値を7200で割って、
- 1速:0.00778
- 2速:0.01111
- 3速:0.01694
- 4速:0.02417
- 5速:0.03319
- 6速:0.04236
- 7速:0.05417
- 8速:0.06861
となります。
これらの数値は、$\frac{車速[km/h]}{エンジン回転数[rpm]}$となっているので、上記の数値にエンジン回転数をかければ、エンジン回転数とギアから、車速が計算できることになります。
メルセデスAMG A35
直列エンジン4気筒 2.0L ターボ
最高出力:225kW(306PS)/5800rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgf・m)/3000-4000rpm
エンジン性能曲線は以下のグラフになります。
トランスミッション:7速DCT
- 1速:3.857
- 2速:2.429
- 3速:2.905
- 4速:1.189
- 5速:0.872
- 6速:1.162
- 7速:0.936
- 最終減速比(1/2/4/5速):4.113
- 最終(3/6/7速):2.385
A35の場合にはメーカー公表のデータがありますので、いつも通りエンジン回転数とタイヤサイズから、エンジン回転数とギア比が定まった場合の車速を計算できるようになります。
A45Sが0-100加速タイムが3.9秒の理由
さて、A45SとA35のローンチコントロール作動時のフル加速時の加速性能を比較していきましょう。
メーカー公式発表では、
- A45Sの0-100タイム:3.9秒
- A35の0-100タイム:4.7秒
となっています。
ここで直感的に疑問を感じた方は素晴らしいです。
疑問に感じる点は、0-100加速となると、エンジンの立ち上がりの部分、つまり、低速トルクの太さが支配的になります。
また、ターボラグの影響も大きく、排気量が小さく、トルクの太いエンジンほど、排気量に対してのタービンの慣性モーメントが大きいことになるので、ターボラグによる加速の遅れも顕著に現れます。
A45SとA35を比較すれば、
- 排気量が同じ2.0Lのエンジン
- エンジン性能曲線における低速トルクはA35が上回る
- 最大トルクの差からターボラグはA45Sの方が当然大きい
となると、0-100加速タイムでA45Sが0-100加速タイムにおいて、A35に勝てるはずがないのです。
これが面白いことに、ローンチコントロールを作動させて、A45S、A35ともに、DCTをMT車のような制御とすることで、ターボラグのネガティブ要因を消し、驚異的な加速タイムをたたき出すことに成功しています。
その結果、A45SはA35を上回る加速タイムを得ることに成功しています。
では、詳細を見ていきましょう。
A45SはMT車の加速特性を組み込んでいる
以下はA45Sフル加速の動画です。
メルセデスAMG A45Sの加速動画を確認すると、A45Sでフル加速を行うには、
- アクセルとブレーキを同時に踏み込んで、
- 空吹かしの状態で待機し、
- ブレーキを離して一気に加速
することになります。
これによって、トランスミッションのDCTにおけるクラッチミートの瞬間までにエンジンを高回転まで回し、ターボを十分に作動させた状態まで推移させていることになります。
これによりう、A45SはAT車でありながら、MT車と同等条件にすることで、ターボラグの発生を無効化していることになります。
MT車ではターボラグが発生しない
MT車ではターボラグを考慮する必要がありません。
これは、タービン回転数に関して、MT車は計測前に助走期間があると言い換えることもできるでしょう。
AT車とMT車の一番の違いは、エンジン回転数と車速が同期しているかどうかです。
AT車の場合、一般的にロックアップ機構があり、ロックアップされている状態では実質的にエンジンとタイヤまでが直結状態になります。
つまり、エンジン回転数を上昇させるには、車速も上昇させなければならず、エンジンはエンジン自身の回転数の上昇と車速の上昇の両方の仕事を行うことになります。
一方のMT車であれば、クラッチミートの前にエンジン回転数を振り上げておくことが可能で、この空吹かしの期間中に排気ガスの量を増やし、ターボチャージャーを十分に作動させていれば、クラッチミート後、エンジンは車速の上昇のみが仕事となるので、負担が少ない分、加速性能が向上します。
したがって、0-100加速タイムのような瞬発力を計る際には、一般的にAT車はMT車よりも遅くなります。
わかりやすい例を動画で見てみましょう。
クラウンロイヤル 3.0L(AT車)のフル加速
まずはAT車の加速特性の代表例として、大排気量NAエンジンの加速動画を見てみます。
こちらの動画はAT車であるクラウンロイヤル 3.0Lの加速です。
アイドリング状態のエンジンのエンジン回転数が、車速の上昇とともに一緒に上昇していく特性がわかります。
WRX STI A-Line 2.5Lターボ(AT車)のフル加速
次にATのターボ車として、WRX A-Lineのフル加速を見てみます。
このWRX STI A-Lineも、クラウンロイヤルと同じようにエンジン回転数の上昇とともに車速も上昇していく典型的なATの加速特性となっています。
この動画で見ていただきたいのはエンジン回転数の変化速度の部分で、3500rpm以降、一気にレブリミットまで回っているのがわかるでしょうか?
これがターボラグの影響であり、3500rpm以下ではターボが効いておらず、3500rpm以降急激にターボがかかり、加速度に非線形な変化が生じている部分です。
WRX STI 2.5Lターボ(MT車)のフル加速
一方、こちらはMT車のWRX STIの加速動画です。
海外仕様のWRX STIなので、2.5Lターボになっています。
発進前にエンジン回転数を振り上げておいて、クラッチミートの瞬間にエンジン回転数が低下しています。
ここがAT車との一番異なる挙動で、発進前に5000rpm程度に維持し、発進した瞬間に3500rpm程度までエンジン回転数が低下するのに、車速は上昇しています。
この部分において、上記のクラウンロイヤルの加速性能と比較すれば、違いは一目瞭然だと思います。
動画から明らかなように、MT車の場合、ターボエンジンの回転数をあらかじめ上昇させておくことで、ターボを十分に作動させた状態を作り出せば、ターボラグの影響は消滅します。
これを基に、A45Sのフル加速動画をもう一度見てみると、あらかじめエンジン回転数を上昇させてターボラグを解消し、DCTを半クラッチ状態で加速させていく部分において、MT車と同じ加速特性になっていることがわかります。
半クラッチ状態では最大トルク点の追従が最速加速になる
また、A45Sのフル加速動画を見ると、半クラッチの状態、つまり発進直後において、エンジン回転数一定のまま車速のみが上昇していく部分をよく見ると、エンジン回転数を4000rpm程度で制御されているのが見えます。
これは、A45Sのエンジン性能曲線を見ると、見事に最大トルク近傍の回転数になります。
車の加速性能は出力で決まり、出力の大きい車の方が加速性能では優れますが、これはロックアップが効いて、エンジンが直結状態になっている場合のみ。
クラッチで滑りが発生している場合には、最大トルク点を追従するほうが加速性能に優れます。
まとめると、MT車におけるフル加速の最速モードは、
- 発進前にターボを十分効かせておく
- クラッチミート後はアクセル全開のまま最大トルク点を追従するようにクラッチを制御
- クラッチがつながった後は出力が最大になるギアを選んで加速を行う
となります。
A45Sの加速動画を見ると、上記の条件を満たすように、見事な制御しているからこそ、A45Sは爆速タイムを生み出すことになります。
なお、車の加速において半クラッチ状態の時には最大トルク点を追従するほうが加速がよくなる理由について詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
物理におけるエネルギー保存則を基にして、理論においての導出を行っています。
→半クラッチ状態では最大トルク点を追従するほうが加速性能に優れる物理学的理由
十分にターボを効かさなかったら遅くなる
A45Sのようなターボ車において、空吹かしの時間が短く、ターボが十分に作動していない状態でスタートすると、出足が遅くなります。
その失敗作といえる加速動画がこちらです。
この動画では、空吹かしの時間がかなり短い結果、発進の瞬間、3000rpmまで回転数が落ちてます。
回転数が落ちるということは、
- ターボが十分作動していないことが原因となる、
- エンジンのトルク不足が発生し、
- クラッチミートの負荷に耐えれず回転数が落ちた。
となりますので、以上の内容をよく説明する事実になります。
こっちが先ほどから何度か貼っているいる加速動画です。
空吹かしの時間は長いので、ターボをしっかり効いていることになります。
その結果、クラッチミートの瞬間もエンジン回転数3500rpm程度を保っています。
もしA45Sを購入されて0-100加速を測定する機会があるのであれば、空吹かしの期間を十分長く行ったほうが、カタログスペックの3.9秒により近い結果を得ることができます。
加速タイムを測定する上でのA45SとA35の加速性能比較
では、以上のポイントを踏まえて、0-100などの加速タイムを測定する上でのA45SとA35の加速性能の比較を行います。
なお、この加速性能の比較はローンチコントロールを利用した場合のフル加速性能であり、日常用途ではあまり意味はありません。
日常的なアイドリング状態からのフル加速であれば、確実にターボラグが発生するので、A35の方が出足は早くなります。
A45Sのローンチコントルール時のフル加速
まずはA45Sのフル加速についてです。
最大トルク発生回転数は5000rpmであるので、エンジン回転数が5000rpm以下になる領域においては、5000rpmの時のエンジン出力(261.8kW)と、$\frac{車速}{直結状態の車速}$で計算できるクラッチ部分の滑りの比率の積によって、タイヤに伝達されている出力の計算を行っています。
A35のローンチコントロール時のフル加速
次に、A35のフル加速についてです。
最大トルク発生回転数は3000rpmであるので、エンジン回転数が3000rpm以下になる領域においては、3000rpmの時のエンジン出力(125.7kW)と、$\frac{車速}{直結状態の車速}$で計算できるクラッチ部分の滑りの比率の席によって、タイヤに伝達されている出力の計算を行っています。
A45SとA35のローンチコントロール時のフル加速性能の比較
以下のグラフは、先ほど導出したA45SとA35の加速性能の比較です。
スタートした瞬間から、伝達出力の値がA45Sの方が上回っています。
また、エンジンが高回転に達した状況においては、最高出力の差の分だけA45Sの方が圧倒的に速いです。
ターボラグといったターボ車のネガティブな部分をカバーできるローンチコントロール時には、A45Sの本来の加速性能が発揮できることになります。
まとめ
ここまで、メルセデスAMG A45SとA35のローンチコントロール作動時の加速性能の比較を行ってきました。
ローンチコントロール作動時にA45Sが速いのは、MT車のような特性で加速をするためであり、機械的な制御として、半クラッチの期間において最大トルク点を追従する制御を行っているからです。
また、A45Sの性能を発揮するには、フル加速の際には空吹かし状態をある程度長く保つ必要があります。
なお、A45Sのエンジン特性は、完全にレース仕様のエンジンであり、日常における扱いやすさにおいてはA35の方が上回っています。
今回は、ローンチコントロール作動時においてのA45SとA35の加速性能の比較を行ってきました。
日常においての扱いやすさで軍配が上がるのはA35です。
旧モデルのA45の加速性能については、下記の記事をご覧ください。
以上、メルセデスAMG A45SとA35の加速性能の比較について、参考になれば幸いです。