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今回は、レクサス ESが売れている理由について紹介します。
当初はレクサス GSとの入れ替わりで登場する形となり、GSユーザーをはじめ、FRのセダンのラインナップが消滅することに関して賛否両論でした。
しかし、トヨタの発表によれば、レクサス ESの販売初月で目標の16倍となる5600台を受注しています。
さらに2019年度のレクサス内の販売台数ランキングでは、UXに次ぐ2位となっており、意外にも売れているようです。
何がユーザーの心に響いているのか、販売戦略を分析しました。
目次
レクサスにおけるセダンのラインナップ
ESの登場前におけるレクサスのセダンは、LS、GS、ISがありました。
これらの車はすべてFRであり、
- ボディサイズ:LS>GS>IS
- 排気量:LS>GS>IS
- 新車価格:LS>GS>IS
- ベース:セルシオ>アリスト>アルテッツァ
となっており、典型的な車格の序列ができていました。
今まではLSだけはラグジュアリーモデルとして別格の扱いだったのですが、フルモデルチェンジ後、現行モデルのLSはクーペスタイルのスポーツモデルにシフトしていますから、余計にこの傾向が強いです。
レクサスのセダン3モデルは、完全にキャラがかぶっており、サイズの違いしかありません。
この典型的な序列の中に、ESが新規投入されることになりました。
レクサス ESの立ち位置
さて、レクサスの序列におけるレクサス ESの立ち位置を先に紹介していきます。
レクサス ESのポイントとしては、
- レクサス ESはFFのハイブリッド専用モデル
- ボディサイズ的にはレクサス GSの後継モデル
となることです。
しかし、レクサス GSとなると、V6エンジンの搭載やFRレイアウトのセダンとなるので、厳密には性格の異なる車となります。
レクサスには以前、ハイブリッド専用モデルのHSが存在していました。
GS、ES、HSの車両サイズや新車価格を比較してみました。
これより、ESの車格は、GSより少し下、HSより上といった位置づけになります。
レクサス GS 300h | レクサス ES300h | レクサス HS250h | |
エンジン | 直4 2.5L ハイブリッド |
直4 2.5L ハイブリッド |
直4 2.4L ハイブリッド |
全長 | 4,880mm | 4,795mm | 4,710mm |
全幅 | 1,840mm | 1,865mm | 1,785mm |
全高 | 1,445mm | 1,445mm | 1,495mm |
ホイールベース | 2,850mm | 2,870mm | 2,700mm |
新車価格 | 6,278,148円~ | 5,907,407円~ | 4,360,000円~ |
GS>ES>HSという関係は、新車価格にもしっかりと現れていますね。
レクサス ESとISの比較
GS、ES、HSの比較はわかりました。
それなら、レクサス ESは、レクサスの現行モデルにおいて、同じくGSの下のモデルに位置するISとの関係性の明確化が重要になってきます。
ここで面白いのが、厳密にいえば、ESとISは完全に同格にあることです。
よって、見る方向によって評価が変わることになり、ラグジュアリー志向の人から見ればESが上位モデルに見え、走りにこだわる人にとってはISが上位モデルに見えるのです。
よって、お互いにお買い得感がある車となり、明確に車格の序列が見えない関係になっており、互いの領域を侵さない関係性が築けています。
レクサス ESの車格感
まずはラグジュアリー志向の人からの目線で見てみます。
ラグジュアリー志向、ブランド志向の場合、こういう高級車関係は、極端な言い方をすれば、
- 中身はどうでもいい
- ボディサイズの大きさこそクラスを表す
という概念があります。
要するに、パワートレインではなく、直感的な見た目の豪華さがある程度の指標であるという考え方ですね。
※メルセデス・ベンツ CクラスのエントリーモデルであるC180が売れているのもこの理由といえます。
そこで、レクサス ESとISのボディサイズを比較してみましょう。
レクサス ES | レクサス IS | |
全長 | 4,795mm | 4,680mm |
全幅 | 1,865mm | 1,810mm |
全高 | 1,445mm | 1,430mm |
ホイールベース | 2,870mm | 2,800mm |
室内長 | 2,170mm | 1,945mm |
室内幅 | 1,535mm | 1,500mm |
室内高 | 1,145mm | 1,170mm |
こう比べてみると、レクサス ISはレクサス ESよりも一回り小さいです。
日本風な表現をすれば、レクサス ESがアッパーミドルクラスになり、レクサス ISがミドルクラスになるでしょう。
車内空間に関しても、ボディサイズの差がそのまま現れており、レクサス ESの方が広いです。
したがって、目に見える部分だけを見れば、レクサス ESの方がクラスが上の車となります。
レクサス ISの車格感
次に、レクサス ISの車格についてみていきましょう。
パワートレインに目を向ければ、レクサス ISの方がクラスが上の車になってきます。
レクサス ES300h |
レクサス IS | |||
350 | 300h | 300 | ||
エンジン | 直4 2.5L ハイブリッド | V6 3.5L | 直4 2.5L ハイブリッド | 直4 2.0L ターボ |
最高出力 | 160kW(218PS) (システム値) |
234kW(318PS) /6600rpm |
162kW(220PS) (システム値) |
180kW(245PS) /5800rpm |
最大トルク | — | 380Nm (38.7kgf・m) /4800rpm |
— | 350Nm (35.7kgf・m) /1650-4400rpm |
トランスミッション | 電気式無段変速機 | 8速AT | 電気式無段変速機 | 8速AT |
駆動方式 | FF | FR | FR | FR |
この比較表から明らかなように、レクサス ESは動力性能においてレクサス ISに一切勝てません。
レクサス ESよりも低価格になるIS300のターボモデルには最高出力において劣っていますし、同じハイブリッドモデルの300hどうしの比較においても、わずかにレクサス ESが劣っています。
さらに、6気筒モデルを有しているISの方が、スペックにおけるクラスが上に位置します。
ということで、動力性能でみればレクサス IS>レクサス ESであることは明らかとなります。
レクサス ESとISの絶妙な価格設定
さて、価格の比較をしてみます。
レクサス ES300h | レクサス IS | |||
350 | 300h | 300 | ||
5,907,407円 | 5,738,334円 | 5,259,630円 | 4,801,297円 | |
F SPORT | 6,406,418円 | 6,455,307円 | 5,799,444円 | 5,314,630円 |
version L | 7,109,259円 | 6,357,593円 | 5,909,444円 | 5,420,556円 |
この価格設定で面白い部分が
- 排気量面ではES300hとIS300hが同じ
- IS300hのラグジュアリーモデルとES300hのエントリーモデルが同価格
です。
走りを重視している場合
走りを重視している方の場合には、おそらくES300hには目もくれず、ISを選ぶでしょう。
そもそもESの駆動方式がFFという時点で候補から外れると思います。
FFでスポーツモデルとして成功しているのは、
- ホンダ シビック タイプR
- ルノー メガーヌRS
ぐらいでしょうから、そう簡単にFFスポーツのイメージを定着させることは無理だからです。
また、グレードも、走り重視でISを選ぶ場合にはF SPORTを選ぶ方が多く、version Lを選ぶことは少ないといえます。
さらに、IS狙いで予算に余裕がある場合、ES300hよりも排気量の大きいIS350を選ぶことになると思います。
結局、性能重視の方はESを相手にしないんですよね。
ISから見れば、ESは畑違いの他人といった位置づけになります。
ラグジュアリー志向の場合
逆に、ISにラグジュアリーを求める場合、version Lを選ぶことになるのですが、やはりボディサイズの小ささがネックになります。
後部座席に乗せるとなると、ISでは小さすぎます。
そこで、同価格でボディが大きくなるES300hを選べるとなると、お買い得感がありますよね。
さらに、GS300hの新車価格が6,278,148円~となるので、ESの方が30万円ほど低価格です。
こうなると、ボディサイズが同じなのに30万円もお得なのであれば、さらにお買い得感が生まれてきます。
ラグジュアリー目線で選ぶ場合、FFであることは気にしない他、むしろ車内空間が広がるということでメリットにもつながります。
最終的に、ESはラグジュアリー志向の人に向けて、絶妙なコストパフォーマンスの高さを与えることができるモデルになっているのです。
だから売れるんです。
余談:なぜES300hが低価格なのか?
余談として、レクサス GSと似ているボディサイズ、同じ排気量とハイブリッドシステムであるのに、ESが30万円ほど低価格に設定されているのかについても推測しておきましょう。
これには、
- 多く売れているパワートレイン
- 開発費がかかっていない
という2点があげられると思います。
レクサス GSは縦置きエンジンのハイブリッドシステム
レクサス GSには縦置きのハイブリッドシステムが採用されています。
こては、トヨタ クラウンからの流れであり、FRレイアウトの車でもハイブリッドが採用できるようにと開発されたものです。
FRレイアウトの車となるとある程度車両サイズも大きくなってきますから、トヨタでいえば、クラウン以上のモデルにしか採用できないハイブリッドシステムになります。
レクサス ESは横置きエンジンのハイブリッドシステム
レクサス ESには横置きのハイブリッドシステムが採用されています。
これはFFに採用できる形式であり、元々はプリウスに採用されていたハイブリッドシステムです。
このハイブリッドシステムは、トヨタでいえば小型車のヴィッツやアクアから採用できるほか、カムリなどのFFの大型セダン、レクサスにおいてもCTなどのコンパクトカーからRXなどのSUVにまで採用でき、幅広い車に採用できるハイブリッドシステムになっています。
圧倒的な販売量の違いと開発費の削減
よって、レクサス GSとレクサス ESのハイブリッドシステムの比較をした場合、販売台数に圧倒的な差があります。
さらに、今のトヨタのハイブリッドシステムは、最新のマルチステージハイブリッドに移行しており、ESが採用しているTHS-Ⅱは過去のシステムとなりつつあります。
この、
- 販売台数の差
- 新規開発コストが発生していない
という2点から、レクサス ESは、レクサス GSよりも低価格な設定にできたということになります。
もしもGSのフルモデルチェンジをした場合、新開発のマルチステージハイブリッドの採用は必須になっていたでしょうから、GSの新車価格はさらに上昇していたことも容易に予想できます。
まとめ
ここまで、レクサス ESが売れている理由について考えてきました。
レクサス ESが売れている理由は、ISとは違ったもう一つの選択肢としての立場を確立できたからといえます。
レクサス GSの場合には、LS>GS>ISの関係が強く、典型的なボディサイズの違いによる車格の序列が生まれていました。
その関係上、GSはISよりも確実に高額な設定となっており、GSクラスのボディサイズが欲しくても、車両価格が高騰することから、排気量においてクラスを下げる必要がありました。
★ポイント
IS300h version L:5,909,444円
ES300h:5,907,409円~
GS300h:6,278,148円~
GS300(旧GS200t):5,888,056円~
IS300h version Lを検討していた場合、GSを選ぶにはGS300に排気量を下げる必要があった。
ESの場合にはIS300h version LとES300hを同価格にすることで、カタログ上の表記スペックを下げることなく、上位モデルを選びやすくしている。
その反面、ES300hのパワートレインに関しては既存技術を流用したFFとすることでコストダウンをしている。
レクサス ESの場合には、GSよりも低価格になり、かつISのversion L(ラグジュアリーモデル)とほぼ同価格に設定することで、手の届きやすい価格になりました。
さらに、ISにラグジュアリーを求め、ボディサイズ的に上位モデルとなるESを選んだ結果、
- 同じ価格
- 同じ直4 2.5L ハイブリッド(カタログ上の表記スペックが同じ)
で、よりボディサイズの大きな車が購入できるとなると、これもお得感があります。
こうして、ESとISの間に明確な車格の違いがなく、サイズで選ぶか走りで選ぶか、見る角度によって評価が変わる。
そして、ほぼ同価格帯に設定することで、ISの上位モデルとしてのGSではなく、ISと違う選択肢としてのESになることで、上手く棲み分けができたことになります。
以上、レクサス ESについて、参考になれば幸いです。