インプレッサWRX STIのエアインテークとランエボの排熱ダクトの流体力学的性能比較と効果を考察

いろいろ話題になるボンネットの穴。

WRX STIの吸気用エアインテークとランサーエボリューションの排熱ダクト。

どちらもボンネットの穴ですが、どっちが優れているのか比較しました!

なお、この記事では流体力学的な観点を書いていますが、式を使わずに分かりやすく説明していきます!

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この記事の背景

何かとファンの多いスバルとランサーエボリューションなので、ボンネットの穴に関して、話題になることが多々あります。

「吸気用エアインテークと排熱ダクト、どっちが優れてるか?」みたいな。

しかし、話題になっても答えが出ずに終わっていることが多いようです。

開発者側も効果を確かめたうえでエアインテークやダクトを設置しているので、どちらも無駄なものではないです。

WRX STI(というか、スバル全般)と、ランサーエボリューションの設計思想の違いを感じていただくことが、この記事の最大の狙いとなています。

一旦冷静になって、物理法則に基づいた考えをすると、新たな発見がありますよ~!

おもしろかったら、どんどん拡散してくださいね!

参考

スバルのエアインテークの必要性については、下記の記事で紹介しています。

参考にしてください。

スバルのエアインテークの必要性について

「ボンネット上が負圧になる」が間違いの理由

インターネット上で調べると、一部では「ボンネット上は負圧になる」という考えがあるようですが、
残念ながら、これは間違いであるといえます。

ランサーエボリューションの排熱ダクトの効果を説明するために、ボンネット上が負圧になることで圧力差で引き抜くと説明したいのだと思いますが、ボンネット上は負圧になりません。

ボンネットは、前面投影面積の分だけ走行風を受けるために、高圧な部分になります。

ランサーエボリューションが排熱ダクトから排気する理由は、もっと違った原理となります。

余談ですが、走行中の車の負圧になる部分を考えてみましょう。

車が走行中に負圧になる部分は、車の後方です。

この状況を、図で考えてみましょう。

100km/hで走行する車を考えましょう。

車の後方部には、ちょうど車が走り抜けた分だけの空の空間が生じます。

その部分は「空気がない」→「圧力が低い」となります。

この圧力差に引かれて空気が車の後ろに回り込む

なお、図でも表していますが、車の走行風は、ボディ背面の形状には追従できません。

これは、車を基準とした座標系で、風速100km/hの風が吹いていると考えると分かりやすいでしょう。

空気にも質量があるので、慣性力が働きます。

100km/hの空気の流れは、力が働かない限り等速直線運動を行います。

その空気が、車両後方の負圧により、圧力差で流線が変わるのです。

※車の後ろで巻きあげられた葉っぱとか想像すると分かりやすいかも。

流体における粘性

流体力学における重要な部分として、「粘性」という考えがあります。

粘性と言えば、文字通り「粘り気」のことです。

例えば、水にも粘りがあります。

水の中で手を動かすと、周囲の水も移動しますね。

これは、水の粘性によって、水の移動が伝搬している状態と考えることができます。

粘性を持つのは水だけではありません。

空気も流体ですから、粘性を持っています。

ここで、少し極端な表現ですが、新しい考え方として、「車はネバネバした空気という流体の中で運動している」と考えてください。

流体力学的にみるボンネット上の境界層

次に、新しい概念として、境界層というものを考えていきます。

時速100km/hで走行中の車の走行風が、無限に遠い場所まで伝わることはないですよね。

これが境界層の考え方です。

自動車のボンネットを基準とし、風速100km/hの風が吹いているとします。

※この100km/hの風を「主流」と言います。

また、流体力学の考え方として、静止している物体に接触している部分の流体の流速は、0km/hになります。

つまり、ボンネットに接している空気の流速は0km/hであり、ある部分以降は100km/hとなります。

それなら、流速0km/hと100km/hの間位には、何かしらの速度分布が生じていると考えられますね。

この速度分布が生じている部分が、流体力学的に言う「境界層」です。

また、主流に対して99%に流速になる部分までの厚みのことを、「境界層厚さ」と言います。

この専門用語を図にまとめます。

この境界層には、層流境界層と乱流境界層というものがあり、境界層は、層流境界層から乱流境界層へと発達していきます。

さらに細かく書けば、層流境界層と乱流境界層の間には、遷移領域があり、遷移領域では層流と乱流が入り乱れた状態です。

遷移領域に中では、主流側からボンネット側に向けて、層流が乱流に変化していきます。

層流境界層の特徴

層流境界層では、流体が乱れなく流れているのが最大の特徴です。

速度分布の特徴としては、流体の流れの基本であるボンネットとの接点の流速は0である他、層流境界層内部の速度分布は2次関数的な分布になります。

乱流境界層の特徴

乱流境界層の流れの特徴は、その名の通り乱流になっている状態です。

様々な方向に速度を持った流体が入り混じっているため、なかなか解析が難しい部分ですが、実験的な結果も含めると、乱流境界層内の速度分布は下の図のようになります。

層流境界層の速度分布と比較すると、速度変化が急激なことです。

ボンネットの近傍で、主流と同じ程度の流速があります。

まとめると、
流体の境界層流れは層流境界層から乱流境界層へと発達していき、
層流境界層は2次関数的な速度分布であり、
乱流境界層は、急峻な速度分布である。
また、層流境界層から乱流境界層に変化していく部分を遷移領域と言い、
主流側から乱流に変化していく。
となります。

WRX STIのエアインテークの効果

さて、ここで本題ですが、WRX STIのエアインテークの効果について考えていきましょう。

今までの話の中で、ボンネットの近傍でも、走行風が十分あることがわかります。

この走行風をエアインテークから取り込み、インタークーラーに当てることで、ターボチャージャーでの圧縮空気の冷却を行うことが可能です。

特に、スバル車の場合、エアインテークはボンネット後方にありますね。

開発者本人ではないので断言はできませんが、
これは、乱流境界層の流れを吸気することを狙っているのかもしれません。

乱流境界層であれば、急峻な速度分布によって、ボンネット近傍でも主流と同じ空気の流れを受けることができます。

つまり、100km/hで走行していれば、100km/hの風速を受けることができます。

層流境界層で吸気するよりも、乱流境界層で吸気するほうが、冷却効果は高いことが予測できます。

なお、ボンネット上のエアインテークは、冷却効果により、エンジン出力の増強には大いに役立ちますが、空気抵抗にもなります。

このあたりは開発陣の判断次第になりますが、簡単に言えばパワーと燃費、どっちを選ぶかということです。

スバルの場合、パワーを選んだということです。

ランサーエボリューションの排熱ダクトの効果

次に、ランサーエボリューションの排熱ダクトの効果について考えていきます。

スバルの場合、速度分布を考えるとエアインテークの吸気効果が直感的に分かりやすかったのですが、ランサーエボリューションの排熱ダクトについては、もう一つ踏み込んだ考え方が必要になります。

先ほど、「ボンネットに接している空気の流速は0km/hである」と書きましたが、これが大きなポイントです。

排熱ダクトは、ボンネットに空いた穴です。

ボンネット上の平面を考えると、ボンネットの平面状では流速は0km/hですが、排熱ダクト上では流速が0km/hではないのです。

流速が0km/hになるのは、排熱ダクトの底面です。

上の図でもわかるように、排熱ダクト内にも速度分布が生じています。

この速度分布により、エンジンルーム内の熱気を引き抜いています。

これを直感的に説明するなら、「空気の粘性によって、エンジンルーム内の空気が、ボンネット上の流速によって引き抜かれた」と表現できるでしょう。

また、エンジンルーム内にはフロントグリルから流入した空気によって、抜け道から空気を追い出そうとする効果もプラスされ、十分冷却効果は期待できるものと考えます。

まとめ

ここまで、WRX STIのエアインテークと、ランサーエボリューションの排熱ダクトの効果について、流体力学の観点から考察してきました。

簡単にまとめます。

WRX STIのエアインテークの効果

ボンネット上の走行風を取り込むことで、インタークーラー冷却用の空気を取り込んでいる。

ランサーエボリューションの排熱ダクトの効果

空気の粘性を利用して、ボンネット上の走行風により、エンジンルーム内の空気を排気している。

また、フロントグリルから流入した空気も、排熱ダクトからの排熱を促進させる。

一見すると、ただボンネットに空いている穴に見えますが、メーカー開発陣の深い考えがあることがわかりました。

この記事が、何かの参考になれば幸いです。

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