みなさん、こんにちは!
ブリュの公式ブログ.comにお越しいただきまして、ありがとうございます。
今回は、新型のランドクルーザーについて、ガソリン車とディーゼル車の加速性能の比較を行います。
先に結論を書きますと、
- ガソリン車:オンロード向け
- ディーゼル車:オフロード向け
となります。
オフロードでの発進時に必要な、
- 1速ギア固定
- トルコンスリップ状態
- 車両が停止状態(発進する寸前)
の3つの条件がそろう時のタイヤへの伝達トルクを考えればディーゼル車が優位です。
→ランクル300系 ディーゼル車とガソリン車の”オフロード性能”比較
一方で、加速性能そのものは単純に馬力で決まるため、高速道路などのハイスピード域までみた加速性能では、高回転馬力に優れるガソリン車が一方的に上回ります。
この記事では、ガソリン車について取り上げ、
- 苦手な低速トルクを回転数換算で+200rpmでカバーできる
- ガソリン車特有の高回転馬力の魅力
について、オンロード性能ベースで性能比較を行っていきます。
加速性能は馬力で決まることは、以前より当ブログにお越しの方は、すでにご存じかと思います。
低速トルクは等価的に低回転馬力であり、タイヤへの伝達トルクを基準に見ると、最終的にはエンジンの馬力にまでたどり着きます。
関連記事:車の加速性能はトルク?馬力?
目次
ランドクルーザーのスペックの紹介
ガソリンエンジン
V型エンジン6気筒 3.5Lツインターボ
最高出力:305kW(415PS)/5200rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgf・m)/2000-3600rpm
ディーゼルエンジン
V型エンジン6気筒 3.3L ディーゼルターボ
最高出力:227kW(309PS)/4000rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgf・m)/1600-2600rpm
ギア比は共通
ギア比はガソリン車・ディーゼル車共通ギア比の10速ATであり、ギア比は、
- 1速:4.923
- 2速:3.257
- 3速:2.349
- 4速:1.944
- 5速:1.532
- 6速:1.193
- 7速:1.000
- 8速:0.801
- 9速:0.661
- 10速:0.613
- 最終減速比:3.307
- 副変速機:Hi 1.000, Lo 2.618
となっています。
ここで、ギア比が共通ということで、比較対象をエンジンだけに絞ることができます。
また、オンロードの動作を比較するため、副変速機はHiを選択している状態を仮定します。
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの単純な比較
ガソリン車とディーゼル車のエンジン性能曲線をエクセルにプロットすれば、以下のようになります。
・ガソリン車
・ディーゼル車
この2つのグラフを重ね合わせると、以下のようになります。
等価的にローギア設定なディーゼル車
トランスミッションのギア比が低ければ、トルクが増幅されて発進性能(発進する瞬間の蹴り出し)が向上することは、みなさんご存じかと思います。
一方、トランスミッションを利用しなくても、エンジン特性として、等価的にローギアを嚙ませているような特性にすることができます。
では、ガソリン車とディーゼル車のエンジン性能曲線をご覧ください。
傾向としては、ガソリン車のエンジン性能曲線を、左上に引っ張るとディーゼル車のエンジン性能曲線に近くなります。
グラフ上の左上、つまり、回転数が低く、トルクが太いということになり、これは等価的にローギア設定ということがわかるでしょう。
※同様の例として、等価的なローギア設定は、レヴォーグのCB18″DIT”とFB16″DIT”の比較でも確認することができます。
回転数が$\frac{1}{A}$倍になると、トルクは$A$倍になります。
そして、トルクと回転数の積で決まる出力については、倍率が$\frac{1}{A}×A=1$倍となり、打ち消されます。
上のグラフの3000rpm以下に注目すると、等価的なローギア設定の意味するところがご理解いただけると思います。
すなわち、発進性能(発進から1速 3000rpmまで)に関してはディーゼル車が優位になります。
ポテンシャルの高いガソリン車
逆に、高回転になるとガソリン車が優位になり、高速域においてのエンジンのポテンシャルの高さを示しています。
ガソリン車の最高出力は、305kW(415PS)であり、ディーゼル車の227kW(309PS)を大きく上回ります。
これはエンジンのポテンシャルの高さを示しており、等価的には、馬力の比率は、エンジンがタイヤにまで伝え得る最大トルクの比率でもあります。
高回転馬力と加速性能について、逆説的な表現になりますが、最高出力が加速力の関係は、以前の記事より、
$$駆動力=\frac{馬力}{定数×タイヤ回転数×タイヤ半径}$$
でわかります。
そして、
- タイヤの回転数:車速で決まる
- 最高出力を発生するエンジン回転数が既知
- トランスミッション:車速とエンジンの最高出力発生回転数の回転数比率に最も近いギアを選択
とすると、最高出力を加速力として最大限に生かすことができます。
この条件を満たすために、アクセルを踏み込んだ時には、自動でキックダウンが行われるのです。
つまり、ディーゼル車比で、最高出力の高いガソリン車は、キックダウンによってエンジン回転数を最高出力発生回転数の5200rpmにまで上昇させることができる車速以上においては、エンジンのポテンシャルを最大限に生かすことができます。
フル加速性能の比較
では、フル加速性能を比較します。
ガソリン車で、横軸を車速[km/h]、縦軸に発揮しうる最高出力を示すグラフは次の通りです。
最高出力のつながり方を見ると、ガソリン車は、ざっくりとですが、7速までは加速重視のギア設定、8~10速は燃費重視のギア設定になっています。
フル加速時に最速となる変速制御は、下のグラフで現在の車速(横軸)に対し、出力(縦軸)が最も高くなるギアを選択する変速制御になります。
同様にディーゼル車です。
ディーゼル車は、エンジンを高回転まで回すことはあまり想定していないようです。
例えば、1速50km/h手前の出力と、2速50km/h手前の出力を比較すれば、2速のほうが出力が大きいです。
エンジン許容回転数的に、1速でも50km/h少しぐらいまでは加速できますが、1速で高回転まで回すよりも2速にシフトアップしたほうが速い状況が生じます。
2速以降の高回転域も同様です。
あまり加速重視のセッティングにはなっていません。
グラフの見方ですが、加速は出力で決まるため、車速に応じて出力が高くなるようにトランスミッションのギアを選ぶイメージで見てください。
ガソリン車とディーゼル車の加速性能曲線を重ね合わせます。
予想通りですが、1速の低速域(30km/h以下)を除いて、ガソリン車の方が加速性能が高いです。
よって、アクセルを踏み込んだ時のフル加速性能はガソリン車の方が性能が高く、ガソリン車の方が余裕のある走りになります。
オンロードでは全領域でガソリン車の性能の高さが光る
アクセルをジワリと踏んだ時のエンジン回転数上昇(静粛性)を比較してみましょう。
想像している状況は、高速道路の巡航や、追い越し加速です。
高速道路で一定速で走行する運転や、アクセルを全開にしなくても、3000rpm程度で追い越していく運転シーンをイメージしています。
さて、この場合、一般的には低速トルクの太いエンジンのほうが有利です。
ガソリン車とディーゼル車のトルクの差は50Nm。
一見大きそうに見えて、オンロードではあまり差がないことについて、説明していきます。
参考に、アクセルをジワリと踏んだ時の加速性能は、低速トルクの太い車のほうが静かであることを説明しておきます。
一貫している点として、加速性能は馬力で決まる考えを基準にします。
そして、馬力はエンジン回転数とエンジン発生トルクの積で決まります。
これより、加速に必要な馬力が同じの場合、低速トルクの太いエンジンは、エンジン回転数が低くても問題がなく、静粛性や燃費に貢献します。
言い換えるのであれば、エンジン回転数が低くてもトルクでカバーできるから、と表現できるでしょう。
エンジン回転数の差分
ディーゼル車のトルクが最大となる範囲(1600rpm-2600rpm)に注目して見ます。
・1600rpmの時
ディーゼル車が1600rpmで700Nmを発揮しますが、この時の出力は113.7kWとなります。
加速(発進性能)はエンジンの出力で決まるため、ガソリン車で113.7kWの出力を発揮する回転数は、1780rpm付近。
つまり、仮にディーゼル車が1600rpmで高速道路を巡航している状況であれば、ガソリン車のエンジン回転数は1780rpmになります。
この差は180rpmです。
・2600rpmの時
2600rpmの時、ディーゼル車は190.6kWを発揮します。
ガソリン車は、同じ出力を2800rpm付近で発揮します。
ディーゼル車が追い越しのためにアクセルを軽く踏み2600rpmで追い越しているとします。
その同じ追い越し性能を、ガソリン車では2800rpmで実現できます。
この差は200rpmです。
下の画像は、ランドクルーザーのメーターデザインです。
さて、200rpmの差は、このメーターデザインではほぼ誤差の範囲でしょう。
回転計の読み方はみなさんご存じだと思いますが、1, 2, 3…と書いているのは1000rpm単位で、その中の小さい目盛りが100rpm刻みです。
つまり、ディーゼル車が低速トルクに優れるといっても、オンロードにおいてはガソリン車は小さい目盛2つ分で追いつける性能になります。
性能曲線上での比較
再度性能曲線の比較を見ていきます。
先ほど計算した同じ出力になる回転数の差は、性能曲線上で右側縦軸(出力)の値が同じになる横軸(回転数)を比較することで計算できます。
出力の曲線を見ていけば、
- 3000rpm以下はディーゼル車が優位(回転数換算200rpm程度の僅差)
- 3000rpm以上はガソリン車優位
- 4000rpmでディーゼル車は限界
- 4000以降はディーゼル車がパワーダウンする一方、ガソリン車はまだまだ伸びる
とわかります。
つまり、オンロード性能におけるディーゼル車の優位性は、エンジン回転数が3000rpm以下の状況ですが、ガソリン車がディーゼル車比でエンジンを200rpm程度だけ多めに回せば、同じ性能が得られます。
一言で言うなら、ガソリン車が一発アクセルを吹かせばディーゼル車の性能を超えることなります。
500rpm~3000rpmの拡大図が下のグラフです。
- 黄色の線:ディーゼル車
- オレンジの線:ガソリン車
であり、緑で塗った部分の回転数差に注目すると、これまでの話の流れが視覚的にわかるでしょう。
なお、横軸の補助目盛は100rpmです。
50Nmの差がたった200rpmの差で補える理由
50Nm差というと大きいように感じますが、
- ガソリン車:650Nm
- ディーゼル車:700Nm
とみると僅差です。
ガソリン車基準で見ると、700Nmのトルクは、$\frac{700}{650}=1.077$倍の存在。
50Nmの差も、もともとのトルクの太さに埋もれてしまい、ほとんど差がなくなってしまうんですね。
そのため、ガソリン車がトルクで劣るといっても、たった200rpm多めに吹かすだけでカバーできてしまう。
これはディーゼル車の性能が悪いのではなく、低回転域においてディーゼル車に近づくほどの性能を持つガソリン車が高性能とみるのが正しいでしょう。
そもそもが、ランドクルーザーに限らず、ディーゼル車は低速トルクが太く、高回転馬力に劣るエンジンです(トラックにディーゼルエンジンが多いのも低速トルクを重視するため)。
なので、ランドクルーザーのディーゼルエンジンは、700Nmの低速トルクと4000rpmで頭打ちのエンジン性能は、傾向的にみると妥当な性能になります。
一方で、ガソリン車は低速トルクが細く高回転馬力が魅力です。
そのガソリン車の苦手とする低速トルクが、ディーゼル車に匹敵するだけのものを発揮して、さらにトランスミッションで最適なギアを選べる状況となれば、ディーゼル車はガソリン車に対し勝ち目はないでしょう。
やはり、ディーゼル車はある意味で予測できる性能であり、一方のガソリン車は、
- ディーゼル車に匹敵する低速トルク
- ガソリン車特有の高回転馬力の魅力
を両立する観点から、オンロードにおいて高性能と見れます。
※これが仮に100Nmと150Nmの差であれば、100Nm側からみると$\frac{150}{100}=1.5$倍の存在となります(これが一般的な感覚)。
※一般的には大きな差となる50Nmも、ほんの僅差にしか見えないランクルのハイパワーな世界は並のものではないですよね。
まとめ
ここまで、ランドクルーザーのガソリン車とディーゼル車について、動力性能の比較を行ってきました。
エンジンの性能的な傾向としては、
- ディーゼル車:低速トルクに優れたエンジン
- ガソリン車:高回転馬力に優れエンジン
となるのですが、オンロード上の比較において、ディーゼル車の得意とする低回転域を見たとしても、ガソリン車が200rpm程度の回転数差で補うことができる程度の差になります。
高回転ではガソリン車が有利なのは自明であり、低回転域でも一発吹かせば、もはや誤差レベルの回転数の上昇で、ガソリン車がディーゼル車に匹敵する動力性能になります。
これより、オンロードでは全体的にみて、ガソリン車のほうが動力性能が高いと結論付けました。
オフロードとなれば、逆にディーゼル車の性能が優位になるので、参考にご覧ください。
もちろん、ランドクルーザーですから、性能だけではなく、乗り味や、個人の好み、あるいはディーゼルのほうが大柄な乗り味になるでしょうから、ある意味でノリ的な部分も含めると、どちらも面白さがあります。
絶対的な動力性能だけではなく、実際に試乗し、ご自身にあったほうのエンジンタイプを選んでください。
そのうえで、
- オンロード性能はガソリン車
- オフロード性能はディーゼル車
ということを、知っておいても損はないでしょう。
以上、ランドクルーザーのガソリン車とディーゼル車のオンロードでの加速性能比較(動力性能比較)について、参考になれば幸いです。