フォレスター Advanceは、スバルが新規に投入したフォレスターのハイブリッドモデル。
ハイブリッドと称さないe-BOXER搭載車に試乗してきました。
思ったよりもガソリン車に近い感覚で、ハイブリッド感がなく乗りやすい車でした。
また、実際の走行フィールと、各種燃費データーの比較で、スバルがフォレスター Advanceをハイブリッド車と称さない理由がわかりました。
目次
フォレスター Advance(SKE型)の基本情報
フォレスター Advance
水平対向4気筒 2.0L e-BOXER
エンジン最高出力:107kW(145PS)/6000rpm
エンジン最大トルク:188Nm(19.2kgf・m)/4000rpm
モーター最高出力:10kW(13.6PS)
モーター最大トルク:65Nm(6.6kgf・m)
エンジンは新世代BOXERエンジンのFB20型エンジンが採用されています。
エンジン出力に関しては、特別にハイブリッド用に調整されているのではなく、インプレッサなどのガソリンエンジン単体を搭載するモデルとほぼ同等スペックになっています。
モーターは最高出力は10kWと小さいですが、トルクに関しては6hNmとなります。
軽自動車のターボに相当するトルクが発揮されるので、カタログ表記的にはシステム全体で2.5L車相当の動力性能と言えるでしょうか。
フォレスター Advance(SKE型)の加速性能
試乗時の感想
さて、フォレスター Advanceの加速性能に関して紹介します。
走り始めて感じるのが、ハイブリッド車ではなく普通のガソリン車を運転している感覚です。
プリウスやスカイラインのように、電動モーターの主張が強いわけではなく、あくまでもエンジン主体。
動き出すとエンジンも始動し、エンジン音とともに加速していきます。
ただ同時に、加速性能に関しても、モーターの恩恵をほとんど感じませんでした。
性能評価記事との対比
試乗の前に、フォレスター Advanceの加速性能に関して、モーターアシストの意味合いを検討しました。
→フォレスターe-BOXERの加速性能評価と280馬力ターボモデルXT廃止の理由
この性能評価記事では、モーターがエンジンの低回転域でのトルクを補う形でアシストするということを紹介しました。
この検討内容では、おおよそエンジン回転数が3500rpm以下の時に落ち込むトルクを、モーターで補助しているイメージを紹介しています。
このモーターアシストについても、試乗時に確かめてみました。
発進時にアクセルを踏むと、だいたい3000rpm程度までエンジンが回ります。
アクセル開度を小さくして、2000rpm程度で加速しようとすると、今度はアクセル開度の小ささからか、あまり加速をしてくれません。
結局何が言いたいのかというと、低回転域であるほどモーターの恩恵を受けるはずが、普通に加速すると3000rpmまで回ってしまい、モーターアシストの恩恵が小さくなり、逆にアクセル開度が小さいと、加速の勢いは衰える。
よって、モーターアシストの恩恵が感じられません。
高速巡航時に真価を発揮する?
街乗りではほとんど恩恵を感じないモーターアシストですが、もしかしたら高速道路の巡航時には真価を発揮するのかもしれませんね。
例えば、モーターアシストによって低速トルクが太くなっているのであれば、エンジンはより低回転で巡航することができます。
高速道路の試乗は行っていませんので詳細は分かりませんが、既存データーをもとに少しだけ考えてみます。
例えば、オートックワンの燃費データーを採用するのであれば、
フォレスター Advanceの燃費
市街地:14.1km/L
郊外:18.3km/L
→市街地比+30%向上
高速道路:19.4km/L
→市街地比+38%向上
参考データー:スバル フォレスター Advance 実燃費レポート|2リッターエンジン×モーターの“e-BOXER”が発揮する実力は如何に!?(1/4)
(先代)フォレスター SJ 2.0i-Lの燃費
市街地:11.0km/L
郊外:13.4km/L
→市街地比+11%向上
高速道路:16.7km/L
→市街地比+14%向上
参考データー:スバル 新型フォレスター 2.5リッター実燃費レポート|排気量アップはどう影響するか!?気になる燃費を徹底検証(1/5)
普通、ハイブリッド車は高速道路になるほど、ハイブリッドの恩恵が小さくなります。
例えば、プリウスの場合、
市街地:28.6km/L
郊外:31.1km/L
→市街地比+8.7%向上
高速道路:29.0km/L
→市街地比+1.4%向上
参考データー:トヨタ プリウス(2018年12月MCモデル) 実燃費レポート |日本が誇るエコカーの代名詞の実燃費を徹底検証!(1/4)
となり、高速道路では郊外路よりも燃費が悪くなります。
しかし、フォレスター Advanceの場合には、車速が上がるほどに燃費が向上しているのがわかります。
フォレスター Advanceをハイブリッドと称さない理由
したがって、フォレスターのモーターアシストの意味については、
・エンジンの低回転域でのトルクの落ち込みをアシストし、
・システム全体で低速トルクを太くすることで、
・高速走行時にエンジン回転数を低く設定できる
という点にあると言えるでしょう。
スカイラインなどでは瞬発力を上げるために強力なモーターを搭載していますが、フォレスターは加速時にはモーターアシストの領域が小さい回転数で加速します。
こう考えれば、市街地~郊外路での試乗でフォレスター Advanceのモーターアシストの恩恵を感じにくいのは説明がつくでしょう。
一般的なハイブリッド車は、「低燃費」、「瞬発力」を重視しています。
それに対し、フォレスター Advanceの魅力は、パワートレイン全体の低速トルクを太くすることで、高速道路巡航時に、エンジン回転数を低く抑えることによる低燃費と静粛性にあると言えるのではないでしょうか?
フォレスター Advanceの目指すところが、一般的なハイブリッド車とは異なるから、スバルはフォレスター Advanceをハイブリッドと称さないのでしょう。
※試乗日記なのか性能評価記事なのかわからない記事になってきましたね・・・(笑)
フォレスター Advance(SKE型)のハンドリングとブレーキ
フォレスター Advanceのハンドリングとブレーキ性能について紹介します。
ハンドリング
ハンドリングは良好です。
レガシィ”DIT”と比較して、腰高感を全く感じません。
少しカーブがあっても、姿勢を崩さずに曲がっていきます。
このハンドリングに関しては、スバルの新世代プラットフォームである、スバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)が登場してからかなり変わりました。
以前のフォレスターやレガシィ アウトバックでは、腰高間があり、コーナーでは外側に姿勢を崩しながらカーブする感じがありました。
新型のフォレスターではそんなことは全くなく、スパっと曲がっていくのは非常に好印象です。
フォレスターは、車幅が拡大し、その分安定感が増している可能性もあるのですが、それ以上に車全体が一体になった、塊のような感じが印象的です。
ブレーキ
ブレーキについても全く違和感はありませんでした。
ハイブリッド車は回生ブレーキが作動するため、どうしてもブレーキがスイッチのような感覚になりがちです。
しかし、フォレスター Advanceでは、しっかりとブレーキが作動している感じが伝わってくるので、ハイブリッド車特有の違和感や、なんとなく不安なブレーキフィールは一切ありません。
フォレスター Advance(SKE型)のエクステリア
では、フォレスター Advanceのエクステリアを紹介します。
エクステリアは先代からのキープコンセプトながらも、グリルのデザインなどが平面的になっていることで見分けがつきます。
スバル共通デザインのコの字型ヘッドライトは、夜間には車幅灯としてLEDが光ります。
サイドから見ると厚みがあり、重量感のあるデザインです。
アクセントとなるメッキが、重心の低いデザインを実現しています。
リアデザインは大きく変更され、特にテールライトはコの字を強調。
マフラーは一本出しです。
フォレスター Advance(SKE型)のインテリア
次に、フォレスター Advanceのインテリアを紹介します。
まずは運転席・助手席です。
サイドのサポートがしっかりしていて、座った位置がずれにくいです。
後部座席の足元空間はそれなりに広いという感じ。
後席の快適性を求めるなら、レガシィ アウトバックが良いでしょう。
リアにもエアコンの吹き出し口があり、特に夏場は快適です。
バックモニターも装備されています。
ハンドル下のスイッチ類です。
マルチファンクションディスプレイには、ハイブリッドシステムの動作状況がリアルタイムで表示されます。
フロアカーペットにも「FORESTER」のロゴが。
カーゴルームは、十分な広さです。
後部座席を前に倒すと、広い空間が生まれます。
大きく、長い荷物も積載可能になる他、フラットな空間となるので車中泊も可能でしょう。
フォレスター Advance(SKE型)のギャラリー
試乗したフォレスター Advanceのギャラリーです。
まとめ
ここまで、フォレスター Advance(SKE型)に試乗した感想について紹介してきました。
正直なところ、モーターアシストがあるので2.5L相当の加速をするのかと思ったら、全く異なりました。
ハイブリッド車の蹴りだし感のある加速を期待するのであれば、フォレスター Advanceではないでしょう。
また、加速性能に関して気にされているのであれば、すべての面において2.5Lモデルのフォレスターの方が優れます。
フォレスター Advanceは、先進性とランニングコストを抑えることがメリットです。
ハイブリッド車という先入観が先行し、フォレスター Advanceの目指す価値観の一致がないと、車選びを失敗する可能性があるでしょう。
このあたりが、フォレスター Advanceをハイブリッド車と表現しない理由だといえます。